鬼軍曹様の厄よけ豆まきも何するものぞと、
なんと45年振りという厚さの積雪と相成った東京だったそうであり。
バイクは勿論のこと、四輪でのお出掛けも危ぶまれたほどで。
アメフト第一主義なのと同じくらい、
実は機械いじりもお好きな子悪魔様の、
電化方面のホームセンターへのお買い物へと付き合って、
都心までを久々に“電車で”訪れた葉柱と妖一坊やだったのもそんなせい。
日曜だとはいえ、昨日の晩からの大雪の影響か、
街なかは、
地下街も含めて さほどごった返してもないのがむしろ印象的であり。
地上なぞ、人影自体が平日以下の人口密度だったりするから、
何の祭りかという規模の人の流れの方に慣れている坊やなぞ驚いたのなんの。
「去年だったか、成人式が散々だったのより久々なんか?」
「ああ、そういやそんな騒ぎもあったなぁ。」
出来るだけ長いスパンぶりとした方が、
規模もデカく聞こえるからだろうなというお兄さんの言いように。
皆既日食とか金環食とかが続いた、あの天体ショーを思い出したか、
「そういや金環食も、
京都でとか北陸ででもとか、見える範囲を広げりゃ広げるほど、
何十年ぶり何百年ぶりって
言い方が大仰になってたもんな。」
「そうだったかな。」
葉柱さんにしてみれば、そちらへは覚えがなかったか、
さっきと違って同意が得られなかったもんだから。
「〜〜っ 」
そうだったんだよという不機嫌顔つきのトゥキックが
カフェのカウンターテーブルの下で、
こそりと(?)炸裂したのは相変わらず。
椅子が高すぎでブラブラさせてたその弾みのような、
さりげない攻撃で、
「痛ってぇなっ 」
「俺の倍生きてる奴がそんなでどうすんだ。」
「ちょっと待て、倍は言い過ぎだぞ。」
倍は倍だ、
いいや微妙だぞ、俺 早生まれだしよ、と。
何でか論点がズレているのもご愛嬌。
小さい子供のすることと侮るなかれ、
結構コツを押さえた蹴りようをする坊やによるキックで、
向こう脛というどんな豪傑でも飛び上がるだろう箇所を蹴られても、
あっさり丸め込まれてくれる、もとえ、
油断も隙もない子悪魔さん相手の会話を滔々と続けられるほど、
口が達者になった総長さんで。
とはいえ
「うっせぇなっ、
早生まれとDTを言い訳にしていいのは中学生までなんだよ。」
そんな爆弾発言を、
白昼の都心のスタンドカフェにて
堂々と言い放ってしまう坊やだったりするもんだから。
「…おいおい。」
大きな窓の外を塗り潰す、久方ぶりの雪の白さに溶け込みそうな、
それは儚げなまでに白い頬したかわいい坊や。
結構豪華なジャケットの、
ふっかふかのボアに縁取られたフードを下ろした小さな背中も可憐な。
フランス映画に出て来る薄幸の少年役の子役のように、
そりゃあ絵になる愛らしい風貌をしておりながら、
「………っ☆」
「え"?」
「い、今なんて…?」
途轍もない暴言を吐いてもけろりとしたまま、
蓋つきカップから突き出たストロー咥えて、
お上品にカフェラテ・ノンシュガーを味わう恐ろしさ。
しかもしかも、
「やだなぁ、
ワンセグでもそんな暴言言っちゃうCM流すんだ。」
たまたま葉柱が手にしていたスマホを指して、
そんな言いようまで付け足す周到さが、
“…末恐ろしいよな、相変わらず。”
ふふーvvと目許を細め、
桜色の品のいい口許たわめて、
今になって天使のような微笑みとやらを披露する同じ坊やが、
先程のアクの強い爆弾発言の主だなんて、一体誰が思おうか。
こうして“外づら”を磨くことにかけての腕を上げ、
あちこちで巧妙に点数を稼いでおいでの、
文字通り“子悪魔”な鬼軍曹様なのであり。
とはいえ、そんな彼がいることで、
ケーブルテレビのアメフト放送は視聴率を上げているのだし。
ちょっとでも油断すれば興味をなくされ、
そのままマイナー枠へ逆戻ってしまう微妙なスポーツの、
存続もかかっていることと思えば、
なりふり構わぬこういった“お茶目”も、
そうそうキツくは咎められないのが現状で。
“とは言ってもな…。”
あんまり図に乗ってもらっても困るので、
そこは総長様も心得たもの。
うふふんと天使の頬笑みを保っておいでの坊やのお隣から、
すいと立ち上がる所作へ紛れさせ、
「今の発言、親父さんへ告げ口してもいいのかな?」
「う"…☆」
ぼそりと囁き、破天荒坊やの顔色を無くさせるくらいの奥の手は
用意している総長様だったりもするようで。
「父ちゃんを担ぎ出すとは卑怯だな。」
「何の、おふくろさんにってじゃねぇだけマシだろが。」
「うう"…。」
ふっふっふっと、小さく口許をほころばせ、
さあ、次はどこ回るんだと、余裕綽々のおにいさんなのへ、
「む〜〜っ 」
腹は立つけど、でもあのね?
ぐうの音も出なかった坊やだったのは、
あのお父さんに弱みを握られるのが癪だったからじゃあなくて。
“チッ、そんな嬉しそうな顔すんじゃねぇよ。////////”
小学生相手に“してやったり”じゃねぇってのと、
お腹の底にて苦笑が絶えない、妖一くんだったりするそうです。
「どした?」
「何でもない。次は電器館に行くぞっ。」
部員たちの尻叩きにも応用させられる、
おっかない小道具の材料探しでもあると、
果たして葉柱さんは気づいているやらいないやら。
風変わりなおデートは、まだちょっと続くようで。
何とか大雪もやんで、
空のところどころからは陽も射しつつある昼下がり。
このまま晴れたらいいですねと、
カフェの看板に描かれたコックさんが、
朗らかに笑って でこぼこな二人を見送ったのでした。
〜Fine〜 14.02.09.
*いやもう、とんでもない大雪になっちゃいましたね。
こちらは昨日の昼間でには何とか落ち着き、
積もってた雪もじわじわ溶けてくれましたが。
二日連続で、しかも日中に襲われた格好の
関東以北の皆様には、大変でしたねとお見舞い申し上げます。
めーるふぉーむvv
or *

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